“幸島をとくに有名にしたのは、サルのイモ洗い行動である。観測者がサツマイモを砂浜の上に置くと、イモと名付けられたメスのサルは海水に浸けて食べるようになった。砂がついていると不味いからであろう。これ自体は偶然の出来事で特筆すべきことではない。興味深いのは、この行動がイモの親族や友達にすばやく伝わっていったことである。また年輩のサルの中には決してイモ洗い行動をしないものもいたという。さらにあるサルは砂がついていない食物も海水に浸けはじめた。塩の味付けをするグルメなサルの誕生である。
このような行動(文化)の伝達様式はミームと呼ばれており、利己的な遺伝子で有名な生物学者・リチャード・ドーキンスが提案した。通常の遺伝子が血縁関係のみで垂直に遺伝するのに対し、ミームは集団内の交わりを通して水平に遺伝する。また遺伝子と同じように突然変異(上述の塩の味付け)や交叉が起こる。災害時のデマ、流行語、ファッションなどはミームによりうまく説明できることが分かっている。もともとミームは、遺伝子中心主義から解放されるために、人間のみが獲得した文化的手段であると考えられていた。しかしながら、幸島のサルによるイモ洗い行動の伝達様式も確かにミームである。
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